夢中文庫

敏腕わんこ部長になつかれて溺愛の日々です

  • 作家砂川雨路
  • イラスト文月マロ
  • 販売日2019/02/22
  • 販売価格500円

自他共に認めるエース営業マンである渋沢部長は、自他共に認める女たらしでもある。そんな渋沢部長が支社に異動となり、お堅い地味子、璃子の直属の上司に。璃子は激しく嫌だったが、支社長に頼まれては仕方がない。アシスタントとして渋沢部長に挨拶をすると、あろうことかとんでもないことを頼んでくる。「アシスタントをしてくれるおまえに手伝ってほしい。俺が女遊びをしないように監視してくれ!」えええっ!? なにそれ!? そして璃子の渋沢部長監視の日々が始まった。だが毎日接しているうちに、彼がとんでもないワンコ系で、放っておけないタイプだと知る。女に緩くてムカつくのに、なぜだか心はときめいてしまって――

プロローグ
「部長!」
 キリシマ広告のオフィスに響く私の声。苛立ちで普段より感じの悪い声の先では、上司が大きく伸びをしていた。
「打ち合わせまであと三十分です! もう出ますよ!」
 ひと月前に上司として本社からやってきた彼はのんびり返事をする。
「丸島機器(まるしまきき)さん、電車で一駅先でしょ。間に合う間に合う」
「丸島機器さん方面の路線は電車の本数が少ないんです。十五分に一本ですよ。山手線みたいに二、三分おきにくると思わないでください」
「あ、そうなんだ」
 部長、渋沢(しぶさわ)健人(けんと)は重たい腰を上げ、首をぱきりと鳴らした。
「じゃあ、そろそろ出ようか、神奈(かんな)」
 神奈っていうのは、私の苗字。神奈璃子(りこ)、二十六歳は広告代理店キリシマ広告T支社、勤続四年目の女子だ。
 廊下を進みながら、部長に視線を送り確認する。
「お渡しする資料、中身確認してくれました?」
「ん? 資料ってどこだっけ?」
「持ってもいないんですか!」
「神奈が持ってよ」
「もう!」
 私は渋沢部長のデスクにとって返し、クリアファイルに入れた今日の資料を我が社の封筒に入れ直し、腕に抱えた。丸島機器向けに私が頑張って作った資料をほったらかしだなんて! 電車の中で内容をレクチャーしよう。
「神奈、行くよ。時間ないんでしょ?」
 エントランスでにこにこ言う部長に私は苛立ちを抑えきれない。本当に困った人!
 私はこの男、渋沢健人のアシスタントをしている。
 こう見えて、彼はキリシマ広告では切れ者で通っている。三十四歳の最年少部長は、ここ数年売上の落ち込みと顧客離れの激しいT支社の再建に、本社から送り込まれてきたのだ。
「今日はお時間をいただきありがとうございます」
 打ち合わせ先に時間ぴったりに到着し、通された応接で渋沢部長は明るく頭を下げた。
「まあ、最近はうちも厳しくて安いところでいろいろお願いしてたんですけどね」
 そう答えるのは丸島機器の丸島社長。埼玉県に本拠地を構える精密機器の小さな会社だ。
 以前、パチンコメーカーと付き合いがあった頃は羽振りよく、うちでもバンバン広告や宣伝を頼んでくれた。最近遊戯市場が国外に流れた結果、業績が厳しくて、うちとのお付き合いもなくなっていたところ。
 渋沢部長は、こういう取引先を中心にアポイントを取っている。
「コストをかけずに効果的に宣伝を打てる案を持ってまいりました」
 渋沢部長はにっこり微笑んだ。
 ここからが彼の腕の見せ所……。
「お疲れ様です。お見事でした」
 帰りの電車で私は渋沢部長に頭を下げた。
 打ち合わせは大成功。最初は硬い表情をしていた丸島社長が、最後はうちの提案をのみ、めでたく新しい契約の締結となった。
「神奈が用意してくれた資料がよくできてたからだよ。ありがとね」
 こんな風に優しく部下を立ててくれるのもいいところ。自分ひとりの手柄にしない。
 そう、渋沢健人は仕事面では本当に優秀な上司なのだ。実現力、牽引力があり、周囲から好かれる人間的魅力がある。
 ただ、一点だけ。渋沢健人には問題がある。
「ふう」
 ホームに降りた渋沢部長は、ひと仕事終えた男の顔で、爽やかに微笑み言った。
「あー、女の子とエッチなことがしたい」
 私はその背中を思いきりぶっ叩いた。
「公共の場ですよ!!」
「え~、だってあんまり人いないからいいかなって」
 悪びれない部長を一喝する。
「よくないです!」
「もう一ヶ月、禁欲してる……。童貞喪失から最長記録……。暴発しそう」
「やめてください!」
 私は怒鳴ってもう一度その背を鞄で叩いた。
 そう、渋沢健人はど~しようもない女好きなのだ。私はなぜかこの上司のお目付役を頼まれている。

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