夢中文庫

隣国の王に身代わりを差し出しましたが、逃げ切れず何故か溺愛されています。

  • 作家当麻咲来
  • イラスト稲垣のん
  • 販売日2020/10/30
  • 販売価格700円

即位して間もない隣国のセオドア王へ嫁ぐことになった公爵令嬢アドリアーナ。しかし彼女には忘れられない初恋の人がいた。隣国への道中、様子を見かねた侍女ヴィオラからアドリアーナは誘惑の言葉を囁かれる。――「私を、アドリアーナ様の身代わりに差し出したらいいのです」しかも自分を溺愛する父の許可もあると聞けば乗らない手はない。ところが……「どうしてこんな裏切りをしたのだ?」アドリアーナの企みはあっけなくバレ、外交問題になるかと思いきや、そのままセオドアにベッドに押し倒され、なぜか昼夜問わず激しく愛されはじめて――?

プロローグ
「誰か、誰かいませんかぁ?」
 アドリアーナはうっそうと木々に囲まれた森の中にいた。不安そうな声を上げながら、辺りを見渡す。
 誰もが褒めてくれる長い彼女の銀の髪が、一筋木々に絡みついて足を止めさせた。泣きそうな気持ちになりながら、彼女は指先でそれを外す。金色の瞳が涙を湛えて潤んだ。
「お……父様ぁ……メリア……」
 情けない声を上げても誰も反応する人はいない。
 今回、父親であるグラナダ公爵に連れられて、アドリアーナは初めて隣国ティアルシアに来訪した。だが平和条約締結の祝いの宴で、ごちそうでお腹がいっぱいになると彼女は退屈し始めていた。そこに可愛らしい白い子犬が中庭を歩いているのに気づき、アドリアーナ付きの侍女メリアが目を離した隙に、その後を追ってしまっていたのだ。
 頭の中には、母の心配そうな声が聞こえる。
『アドリアーナは、たまに思い切りの良すぎる行動を取るから心配なのよ』
「お母様、ごめんなさい……」
 生垣の隙間を縫って隣接している森に入ってすぐに、白い犬の姿を見失ってしまい、ようやくアドリアーナは中庭から続く森に迷い込んでいる自分に気づいたのだ。
 まだ七歳になったばかりのアドリアーナは、他国の見知らぬ森に迷い込んでしまったことに気づくと、軽いパニック状態になっていた。そのうちに誰かが探しに来てくれるだろう、ということにも頭が回らず、元の場所に戻ろうと歩き回るうちに、ますます森の奥深くまで迷い込んでいたのだった。
 パーティのために着せてもらっていた美しいドレスは普段着ているものより動きにくい。綺麗な靴だって、歩き回るには不向きだ。貴族は人前で涙を見せるものではありません、と教育を受けていても、足がズキズキと痛くて、ついに涙がぽろり、と零れてしまったその時。
 ──ウウーッ。
 獣の唸り声が聞こえて、ハッと辺りを見渡すと、そこにはアドリアーナよりずっと大きい野犬が一匹、こちらを見て唸り声を上げていた。
「きゃっ……」
 後ずさりをしようと思った瞬間、なれない靴を草に引っかけて、そのまま尻もちをついてしまう。隙を見せた獲物に犬が一気に飛びかかろうとした。その時。
 キャン、キャンキャン。
 小さな犬が吠える音が聞こえ、閉じかけていた目を見開くと、さっきの真っ白な子犬が大きな犬に吠えかかっている。何故か子犬に吠えられただけなのに、大きな犬が一瞬怯んだ。アドリアーナはその様子を見て必死で立ち上がろうとするが足が震えて立てない。
「ルディ、いい子だ。この子を守ってあげてね」
 澄んだ男の子の声が聞こえて、子犬が小さく吠えて返す。次の瞬間、ヒュンッとアドリアーナの後ろから何かが飛ぶ音がした。刹那、大きな犬の傍に矢が刺さったのに気づく。
「……お願い、助けてっ」
 震える膝をなだめながらなんとか立ち上がると、咄嗟に後ろを振り向く。そこにはアドリアーナよりは一つ二つ年上の、古びた衣装をまとった金髪で巻き毛の少年がいた。この辺りの農家か狩人の子供だろうか。

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