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護衛の騎士は菫の姫を恋に染める

  • 作家永久めぐる
  • イラスト弓槻みあ
  • 販売日2018/02/15
  • 販売価格700円

国王の従妹アリーチェは幼い頃に両親を亡くし、国王の庇護のもと、目立たぬよう静かに暮らしていた。しかし、成人を目前に控え、安穏とした引きこもり生活は脆くも崩れる。彼女の身を案じた国王は、近衛騎士ダリオに護衛を命じた。飄々としたダリオに胡散臭さを感じ、はじめは反発していたアリーチェだが、次第に彼の優しさに気付く。そんな時、事件が起こり……。過去に囚われた引きこもり令嬢と護衛の騎士が紡ぐ、甘くて一途な初恋&溺愛ストーリー。

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プロローグ 婚礼の日
 抜けるほどの快晴に、心地よい秋風がそよぐ日。
 王城の敷地内、花々の咲き乱れる庭園の奥の大聖堂では、厳かに結婚式が執り行われていた。
 花嫁は国王の従妹(いとこ)であり、新郎は国内有数の大貴族の子息で近衛騎士を務める男だ。
 王族の慶事は久々であり、また国王が花嫁の父代理となっていることでも大きな話題となっている。
 式が終わったのだろう。列席者が正面の扉から続々と出てくる。
 誰に言われるともなく人々は道端に列を作り、新郎新婦を見送る形をとった。
 主役の登場を待ちながら各々雑談に興じていたが、程なくしてしんと静まり返った。大理石の階段の上に、主役の姿を認めたからだ。
 十六歳の若々しい花嫁は、豊かな金の髪を美しく結い上げて色とりどりの花を差し、その上から白いベールをつけている。純白のドレスには大小様々な真珠がふんだんに縫い付けられており、陽光を柔らかく弾くと同時に、花嫁の初々しい美しさを際立たせている。
 その花嫁を軽々と腕に抱く新郎は、堂々たる体躯を持つ美しい男だ。近衛騎士の礼装に身を包み、自信に満ちあふれた表情をしている。
 花嫁を抱き上げた新郎の姿に、皆がわっとどよめき、新郎の同僚らしい騎士たちは品を損なわない程度にはやし立てる。通常、新郎新婦は腕を組み、ふたり並んで立つものなのだ。そうしないのは、よほど新郎が花嫁を大事に思っているからなのだろうと、皆、微笑ましそうに眺めていた。
 新郎はやんやと沸く人々に向かってニッと不敵に笑い、花嫁は恥ずかしいのか頬を染めて何事かを新郎に囁く。が、新郎は楽しそうに目を眇(すが)めるだけで、首を小さく横に振る。どうやら、花嫁のお願いは聞き入れられなかったらしく、彼女は困ったように眉尻を下げたが、しかし、幸せそうだ。
 新郎はゆっくりと階段を降りると、列席者に向かって声を張り上げた。
「今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます! では、これで!」
 言うや否や、足早に去ってしまった。皆が祝いを述べる暇さえない。
「ダリオ様っ! もう! 下ろしてくださいっ! 来てくださった方に、もっとちゃんとご挨拶を……」
 常識から外れた新郎の振る舞いを、花嫁が必死に諫める声が聞こえたが、それもあっという間に遠ざかっていく。
 まるでつむじ風のような登場と退場に、列席者たちは呆然とし、しばらくしてから弾かれたようにどっと笑った。
 この国の風習では、式の後、新郎新婦は真っすぐに新居へ向かい、豪勢な食事と飲み物が用意された寝室に翌日まで籠もることになっているのだ。
 新郎はそれがよっぽど待ちきれなかったらしい、と男たちは笑い、女性たちは「まぁ!」と恥ずかしげに頬を染め、そこまで思われている花嫁が羨ましいものだと囁き合う。
 中にはダリオの行動に「まぁ、気持ちはわかる」と理解を示す男もおり、その男の妻は自分たちの結婚式を思い出しては「あの時の主人も性急だったわね……」と遠い目をする。
 花嫁の父親代わりを務めた国王レナートは、ようやく肩の荷が下りたと満ち足りた顔で、ふたりの消えた道を眺めた。その横には王妃が寄り添う。
「私も今日のダリオみたいだったのかな?」
 と問うレナートに、王妃は「どうでしたかしら?」と意味深に笑う。
 和やかな雰囲気に包まれる一同の頭上を、小鳥が二匹、仲睦まじそうに戯れながら横切っていった。

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