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あなたを狩りに参ります!~射抜くは未来の旦那様~

  • 作家永久めぐる
  • イラスト無味子
  • 販売日2018/10/09
  • 販売価格700円

貧乏貴族の娘ルイーゼは、趣味の狩りに没頭する変わり者という噂。だが本当は、逼迫する家計を助けるため日々野山を駆けまわっているのだ。弟によい教育を受けさせたいと願う彼女は、裕福な結婚相手を探すことを思い立つ。狩りの場を森から舞踏会へ変え、虎視眈々と未来の夫を探す彼女の前に現れたのは、隣の領を治める侯爵家の嫡男マティアス。完璧な貴公子であるはずの彼は、なぜかルイーゼにだけ意地悪だ。彼は、ルイーゼが珍しく舞踏会に参加している理由を問い詰め、しまいには計画を手伝ってやるから「私を誘惑してみろ」と無理難題を言いだした! ついつい挑発に乗ってしまったルイーゼは……。素直になれない二人の激変ラブストーリー!

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プロローグ
「お父様、お母様、ただいま戻りました!」
 にこやかに笑うルイーゼの両手には、仕留めた鴨と雉、山鳥がぶら下げられている。肩には愛用の弓を背負い、いかにも狩りの帰りだと言わんばかりの出で立ちだ。
「おお、ルイーゼか。おかえり」
「まぁ、今日もすごいわね。疲れたでしょう? いまお茶を入れるわね」
 驚きもせず、返事をするのは彼女の両親だ。
「ありがとうございます、お母様。これをハンナに渡して、それから着替えて参りますね」
 ルイーゼは両手の獲物を軽く掲げながらそう言うと、すぐに台所へ向かった。
 台所では、恰幅の良い中年女性がせわしなく立ち働いている。ルイーゼの家──ツヴァイク伯爵家の台所を一手に預かる料理人のハンナだ。ルイーゼは彼女の背に向けて声をかける。
「ハンナ、ただいま。これ、今日の獲物」
「お嬢様、お帰りなさいませ。──まぁ、丸々として美味しそうな鳥ですこと!」
 今日の獲物を渡すと、ハンナは嬉しそうに笑う。
「これくらいで足りる? みんなに行き渡る?」
 ツヴァイク家に仕えている使用人は少ないが、家族と使用人たち全員が満足に食べられるほどの量が獲れたか、少々心もとない。
「これだけあれば、充分でございますよ! 腕によりをかけて調理いたしますわ。さぁて、今晩の献立はどういたしましょう? 何かご希望はございますか?」
「特にないわ。ハンナに任せる。あなたなら最高に美味しく料理してくれるもの」
「あらまあ、嬉しいことを! では、夕食を楽しみにしてくださいませね。ああ、鴨はオイル漬けにして保存が利くようにいたしましょう。今晩は雉と山鳥をメインにして……。この量の下ごしらえは時間がかかるから、誰かに手伝ってもらわないと。──ヴィム! ヴィム、ちょっと来て頂戴」
 ふたりでお喋りをしていたはずだが、ハンナの話はだんだんと独り言じみ、最後には下男を呼ぶ声に変わった。料理人こそ天職と言う彼女は、良い食材を目の前にすると夢中になってしまう傾向があるのだ。
 彼女の料理に対する情熱は微笑ましい。ルイーゼは小さく笑うとそっと台所を出て、着替えるために自室へと戻った。
 屋敷に入る前に一通り泥や雪、落ち葉を落としたのだが、それでも完全に落ちているわけではない。部屋を汚して召使いたちの仕事を増やさないようにと、ルイーゼは気を遣って服を脱ぐ。
 少年が着るような簡素な服は、父が子どもの頃に着ていたものだ。年代物だが生地がしっかりしているため暖かいし、着心地もいいし、まだまだ充分着られる。少しばかり腰回りが緩いのはベルトで締めればいいので、それは問題ではない。
 ただ、最近困りものなのは、胸がきついことだ。
 ルイーゼはシャツを脱ぎ捨てて、胸を押さえるために巻いていた布をくるくると取り去る。途端、圧迫感から解放されて、ふうっと大きく息をついた。
 体を動かすのだから、なるべく体に負担をかけたくないけれど、そうも言ってはいられない。胸が揺れては何かと邪魔なのだ。矢を射るにしても、野山を駆け回るにしても。
 冬のこの時期、ルイーゼが狩ってくる獲物たちは、ツヴァイク家の家計を大いに潤すのだから、胸が苦しいくらいで文句なんて言ってはいられない。
 ツヴァイク家は、質素倹約の家柄なのだ。いや、有り体に言えば、とても貧乏なのだ。狩猟用の服を新調してほしいなどというわがままは、口が裂けても言えない。
 ──収入が少ないわけではないのだけれど、ねぇ。

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