夢中文庫

愛を漁るふたり~揺らめく月の誘惑~

  • 作家うかみ綾乃
  • イラスト鈴ノ助
  • 販売日2018/4/6
  • 販売価格300円

繋がっているこのひとときだけ、彼への愛しさを欲情に変えて解き放てる──沙友紀はいたって生真面目な性格。彼に二股をかけられ、突然の別れを告げられた傷心の沙友紀が実家に行くと、母に会いに来た青年・湊人と出会い、初対面で見透かされ、追い打ちをかけられるような一言を浴びせられる。後日、職場に現れた湊人から「好きでもない男と純粋に愉しんでみないか」と誘われ、流された沙友紀は激しい快感に支配され自ら求めるほどに乱れた。そして、それは苦しい恋のはじまりでもあった。愛し方を知らないことより、残酷なことってなんだと思う──その答えは…天然石に願いを込めて、切なく揺れ動く。

YAHOO!JAPANブックストアで購入
BookLiveで購入

「どうしてあなたと、こんな関係を続けているんだろう」
 背後で、缶ビールのプルトップを開ける音がした。
 ベッドに俯せている私の背中に、湊人(みなと)が身を屈めてくる。
 唇が肌に触れた。じゅわりと、液体が零された。
 皮膚が冷たく蕩けるような感触を寄こしながら、脇腹を伝い、シーツを濡らしていく。
「自分の気持ちを、俺に訊くのか」
 まだ軽く触れている唇は、笑いの形を描いている。意地の悪い口調を放つときほど、その声は妖しい色香をまとう。
 私は枕に半分埋まった唇で、くぐもった笑いを返した。
「あなたの選んだあの石、グレームーンストーンというの。あなたの左耳につけるには、地味な色かもしれない」
「きみがつくってくれるピアスなら、何色でもいい」
 セッ●スが終わると、彼の私の呼び方は、「おまえ」から「きみ」に戻る。
「あの石に、どんな力があるとされているか、知ってる?」
「誰かが勝手に意味づけしたものに興味はないな。ただきみが見せてくれたとき、乳白色の混じった、透明な灰色がきれいだと思った」
 頬に落ちていた髪が、耳にかけられた。その指が静かに頬をすべり、私の顎をつかむ。
 促されるまま、彼のほうに顔を向けた。湊人は上体を起こし、私を見下ろしながら、またビールを含む。
 淡いオレンジ色のライトの中、刃のように鋭く優美な眦(まなじり)が、潤んだ輝きをまとう。唇から離し、彼がゆっくりと顔をおろしてくる。
 整ったその顔が、どのような表情を浮かべているのか、徐々にライトの影が覆う。
 唇が触れ合った。私は目を瞑り、その柔らかさと、注ぎ込まれる液体の苦みを感じる。
「ンッ……」
 強引に舌が挿し込まれた。冷えた舌肉の先端が、私の舌を掬い、裏側の付け根を圧迫してなぞる。私は息苦しさに堪えながら、泡の合い間でとろりと落ちる、苦い唾液のぬくもりを探る。
「美味しい?」
 唇を離し、湊人がふたたびビールを含む。そうして同じように私に口づけ、液体を流し込む。
「……不味い」
 唇の端から耳元へ、ひと筋の雫を伝わせ、私は答える。
「あなたとこうして飲むビールは、いつも不味い」
「俺も」
 吐息で囁き、湊人は尖らせても柔らかな舌先で、私の唇を舐める。
「だけど、きみを見ていると、こんな悪戯をしたくなる」
「私が嫌がっても?」
「うん」
「そのせいで私が、あなたを嫌いになっても?」
「そうだな」
 そう言って、今度はビールを含まずに、私の口腔に舌をねじ込んでくる。
 私も舌を差し出し、深く絡め合う。
 かすかな粘着音をたて、互いを味わううちに、ふたりの舌肉は同じ体温となり、疼きが泡のように皮膚の下で蠢きだす。
「なんの得にならなくても、たとえデメリットしかなくても、したくなる。これって、俺としては愛だと思うんだけど?」
 混ざり合った唾液で唇を艶めかせ、湊人が微笑んだ。
 腰がつかまれた。身体がゆっくりと仰向けに転がされる。
 しなやかに筋肉をまとった肌がのしかかり、胸板が乳房を押し潰す。
 硬く熱をもつ彼の分身が、私の太腿の付け根に密着する。
「だったらあなたは、愛し方を知らない」
 欲情に上擦りそうな声で笑ってみせると、湊人が私の内腿に手を入れ、片脚を広げさせた。
「じゃあ、逆に質問。愛し方を知らないことより、残酷なことってなんだと思う」
 熱くこわばった彼の先端が、私の潤みにあてがわれる。
 それだけであっけなく、私は脚をこわばらせ、彼にすがりつきそうになる。
「俺のピアスを仕上げるまでに、考えておいて」
 静かに、腰を沈められた。
 雄々しい輪郭を露わに、彼の分身が真っ直ぐ体内に埋め込まれる。
「あ、あぁ……」
 私は仰け反りそうになりながらも、影に覆われた彼の、それでも妖しく光る瞳を見つめる。
 逆に彼からは、ライトに照らされた、歪んだ私の顔が見える。
 ゆっくりと、腰を前後しはじめた。
 徐々に逸(はや)る吐息が、ふたりの間で交錯する。
 顔は見ないで。身体だけを見て──

オススメ書籍

今夜オフィスで誘って

著者水城のあ
イラスト琴稀りん

彩子のストレス解消場所はバッティングセンター。イジワルな先輩の顔を思い浮かべながらバットを振ることだ。ある日、一人屋上で昼食をとっていると、密かに憧れている上司の野村に声をかけられる。「こんなに青い空なら、バッティングセンターより気持ちがよさそう」という一言に彩子は頭の中が真っ白になった。予想通りバッティングセンターには野村の姿。野球経験のある野村がバッティングを指導してくれるという。素直に礼を言う彩子に「男はなんの見返りもなく女性に優しくなんてしないよ」と、意味深発言。それって本気にしていいんですか!?

この作品の詳細はこちら