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恋愛(ラブ)マウンティング~ライバルとの恋の駆け引きに絶賛翻弄中~

  • 作家宇佐木
  • イラスト竹輪つぼみ
  • 販売日2019/6/21
  • 販売価格500円

仕事にプライドを持つ真智は、自分にも他人にも厳しい性格。数か月前にやってきた年上の後輩・春は、容姿も人当たりもよく仕事もできるため、ひそかにライバル心を燃やしていた。ある時、困っているところを春に助けられ複雑な気持ちでいると、突然抱きしめられる。その日からこれまでとは違う気持ちで春を意識し始める真智は、気持ちが乱れていたせいでミスをしてしまい、再び春にフォローされてしまった。プライドがボロボロになっている真智は、春から今回の礼として食事を催促され、渋々了承する。その帰り、春は真智にキス!──「次は真智さんのほうからキスしてほしいって言わせるようにしてみせる」と囁いてきて……!?

雑誌の表紙を飾る有名女優の微笑に、ふと惹かれるように手を伸ばした。
 “MERMAIDIA(マーメイディア)”という、大きな文字が書いてある表紙を無造作にめくる。そのままパラパラとページを送っていき、“ローレンス”という単語を見つけ、手を止めた。そこには、クールな表情をした外国人モデルが掲載されている。透明感のある艶やかな肌、彫りの深い瞼には鮮やかな色のアイシャドウ。
 私はややしばらく、モデルの女性と見つめ合い、小さく息を漏らした。
 このモデル、見るたびに我がローレンスの新作イメージにぴったりで、見惚れてしまう。
 ……こんな広告を作ったあいつに嫉妬する。
「真智(まち)さん、おはようございます。あ。もしかしてそれ、明日発売予定の“MERMAIDIA”ですか?」
 ふいに話しかけられ、視線を上げる。私の手元をじっと見ているのは、デザイン情報部の坂野(さかの)さんだった。
「おはよう。そうなの。編集者さんが送ってきてくれて」
「わあ。やっぱり、うちの広告は目を引きますね。なんといっても、海外で活躍しているモデルのカレンですもん!」
 私より五つ下の彼女は、どちらかというといつもテンションが高め。今も発売前の雑誌を前に瞳を輝かせ、饒舌になる。
「だけど、よくカレンを起用することができましたよね。彼女が主演の映画がヒットして、今かなり忙しいみたいなのに」
 興奮気味に言う坂野さんとは反対で、私は冷静な気持ちで淡々と答える。
「そうね……。槙田(まきた)さんのおかげよ」
 すると、坂野さんはさらに目を大きくさせ、私を見た。
「槙田さんの力ですか! やっぱり彼ってすごいんですね!」
「俺がどうかしました?」
 そこに、当の本人、槙田が姿を現した。
 槙田 春(はる)。私より二歳上の二十九歳、独身。留学経験を活かし、海外でショップ店員として働きながら、モデルのバイトをしていた……と噂で聞いた。
 あくまで噂なわけだけど、それを真に受けてしまうのは、彼の容姿が優れているからだ。目鼻立ちが整っている顔は小さくて、背も高く、すらりとした腕や足を見れば、八頭身以上ありそう。まるで、ファッション誌から飛び出してきたような完璧な男。そんな槙田を見れば、モデルをしていたと耳にしたところで驚くどころか、納得してしまう。
「槙田さん! おはようございます。今、新作広告モデルにカレンを起用できたのは槙田さんのおかげだっていう話を……」
「ああ。あれは、たまたまタイミングが良かっただけで、俺のおかげなんて大袈裟なものじゃ……」
 坂野さんと槙田の会話をよそに、雑誌をパン! と閉じて席を立つ。私の一挙一動に、坂野さんが姿勢を正して表情を引き締めるのがわかった。
「ごめん。私、朝イチで打ち合わせ入ってるから席外すわ。なにかあったら第一会議室に連絡して、とみんなに伝えておいて」
「はい。わかりました」
 って言っても、よっぽどのことでもない限り、普段から自分だけでなく周りに対して厳しい態度の私になんて、誰も連絡なんてしてこないだろうけれど。
 私は心の中で毒づくと、資料とタブレットを小脇に抱え、ひとりで会議室に足を向けた。
 ここは、国内屈指の大手化粧品会社“ローレンス”。創立百年越えの、歴史あるコスメメーカーだ。
 私は物心ついたころから母のメイクに興味を持ち、大きくなるにつれ、当時のコンセプト『誰でも原石』と謳うローレンス社のテレビCMやポスターに、自然と惹かれていった。
 『メイクは隠すためではなく、自分を活かす』という考えが好き。
 昔から気が強いほうの私は、ありのままの自分を受け入れてくれるようなローレンスの言葉に、ひそかに勇気をもらえていた。
 会議室に入りテーブルと椅子をセッティングしようとしたところで、ドアの開閉音が聞こえ、手を止める。
 振り返る必要もない。誰が来たかなんて、予想がつく。
「真智さん。俺も手伝うよ」
 ──ほら。やっぱり槙田(あいつ)だ。
 私は作り笑いを浮かべ、おもむろに顔を向ける。

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