夢中文庫

不遇な令嬢のひとめぼれ~あなたが悪人でも愛してます!~

  • 作家雪村亜輝
  • イラスト亜子
  • 販売日2019/7/2
  • 販売価格300円

両親を事故で亡くした伯爵令嬢のルシールは、後見人となった叔父に幽閉され、孤独に過ごしていた。舞踏会の夜、忙しい使用人の目を盗んで外に出たルシールは、庭園に忍び込んだ美しい青年貴族アシュリーと知り合う。月光の下、優しく囁かれる愛の言葉にルシールは、たちまち心を奪われる。でも時折、アシュリーの瞳がひどく冷たくなることに、ルシールは気付いていた。彼に身も心も捧げる決意をしたルシールを待ち受けていたのは、アシュリーの非情な仕打ち。一人で生きる覚悟を決めたルシールだったが、彼女の揺るがない気持ちが、アシュリーの凍った心を溶けさせて――。

 かつて、自分と両親が住んでいた屋敷から明るい笑い声が聞こえてきた。ルシールはそれを聞きながら、狭い自分の部屋でゆっくりと目を閉じる。
 目を閉じても、闇の深さは変わらない。
 小さな机の上に置かれているランプはもうとっくに消えてしまっていたからだ。この建物に住んでいる使用人達は皆、夜遅くまで働いているから、油を注ぎ足してもらうには屋敷まで行かなくてはならない。
 今は叔父の家族が住んでいるその屋敷の隣には、そこで働く使用人達のための館がある。その中にある、陽当たりの悪い小さな部屋が、今のルシールの住処になっていた。
 でも、夜が更けてから部屋の外に出ることはできない。両親が亡くなったあと、後見人となった叔父によって禁止されているからだ。
 だからルシールは窓から差し込む月の光を頼りに、大切に飾っていた亡き両親の肖像画を見つめた。
(お父様……。お母様……)
 溢れる涙は、自らの境遇を嘆いてのものではなく、ただ突然失ってしまった家族が恋しいから。
 伯爵の地位にあった父と母を突然の馬車の事故で亡くしてから、もう半年。
 その当時、ひとり娘のルシールはまだ結婚しておらず、婚約者さえ決まっていなかった。娘を溺愛していた父は、その夫選びにとても慎重だったのだ。
 でもその父の愛がこうして今、ルシールを暗い使用人の部屋に閉じ込めている。
 両親が亡くなったあと、まだ年若いルシールの後見人として、叔父のロイトンが選ばれた。
 彼は父の弟で、子爵家の娘と結婚して爵位を継いでいたのだが、ルシールの両親の訃報を聞くとすぐに屋敷を訪れた。
 この伯爵家の屋敷は彼にとっては実家であり、生まれ育った場所。
 だが、まだ葬儀さえ終わっていないのに父の部屋を占領し、数日後には自分の家族までもこの屋敷に呼び寄せたのだ。
 さらにその日から、両親のものはすべて叔父夫婦のものとなり、ルシールさえ自分の部屋から追い出されてしまった。
 当然のように周囲からは非難の声が上がったが、すべてはルシールを守るためだと、叔父は神妙な顔で言った。
 未婚であり、婚約者さえ決まっていないルシールを、財産目当て、爵位目当ての男達から守るためだと。
 だから目立たないように使用人の部屋に移し、自分達はルシールのために矢面に立っているにすぎない。きちんとした婚約者が決まり、爵位を継ぐ者が現れたら、速やかに屋敷を去り、すべてをルシールに返す。
 そう言われてしまえば、正式に後見人となった叔父に逆らえる者はいない。
 ルシールも突然両親を亡くした悲しみに打ちひしがれていたので、叔父の言葉にただ頷くことしかできなかった。
 こうして屋敷は叔父の家族が占領し、今、ルシールのものだった部屋には従姉のカレンが住んでいる。
 そのときはすべてを受け入れるしかなかったが、半年が経過し、ようやく自らの立場を考えることができるようになってきた。

オススメ書籍

おじさま伯爵と奏でる激情の睦言

著者こいなだ陽日
イラストルシヴィオ

皮膚病を患い、痕が残ってしまった伯爵令嬢のメリス。侯爵家の幼なじみと結婚し家を継ぐ予定が、「完璧な自慢の娘」でなくなったメリスを手放すがごとく、両親は別の縁談を急に決めてしまう。十八歳のメリスの結婚相手は、四十一歳のアルヴァー。いざ顔を合わせたアルヴァーは男らしく大人の色気に溢れていた。アルヴァーと過ごすうち、メリスは彼の懐深い人柄にどんどん惹かれていく。とある夜、彼のお土産のチョコレートをきっかけにふたりの仲は急接近。そこでメリスはアルヴァーが抱えた「秘密」を知るのだが──。年上のおじ様に溺愛され幸せに浸るメリス。しかしある日、婚約する筈だったメリスの幼なじみが突然やってきて──!?

この作品の詳細はこちら