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召喚されたら聖女で魔女? 異世界の神官たちには困ったものです

  • 作家遊森謡子
  • イラストゴゴちゃん
  • 販売日2019/02/19
  • 販売価格500円

豪雨後の河川敷で事故調査中の花笑は、堰き止められていた土石流の決壊による濁流にのみ込まれ、気づいたら教会のような場所に。茫然自失の花笑の前に現れたのは二人のイケメン。黒い神官姿で不機嫌そうな男の名はジルノルト。白い神官装の爽やかな男の名はディルリウス。二人の説明では、花笑はガイアースという名の異世界にトリップしたのだという。さらに花笑は女神ルルディの子孫だとも。ジルノルトが属する学派ではルルディは悪なので花笑は「魔女」、でもディルリウスの属する学派ではルルディは善で花笑は「聖女」。いったいどっちなの!? そんな中、花笑はいつも不機嫌で憎たらしいことばかり言うジルノルトが気になり始め……

プロローグ
 燭台の三本のロウソクに、火が点された。
 テーブルに置かれたその明かりは、人影が部屋の中を動くたび、ゆらりゆらりと揺れる。しかし、部屋の窓には分厚いカーテンがかかっており、そのゆらめきは外には漏れない。
 床には美しい灰色の大理石が張られ、不思議な文様がぐるりと丸く彫り込まれている。人影はその文様の中心に楕円形の姿見を置くと、何かつぶやきながら指先で姿見の上の部分に触れた。
 部屋の様子を映していた鏡が、不意に白くぼやける。
 そして、まるで上空から雲を突き抜けるかのように、ある土地の景色が白い靄の中から現れた。映像はぐんぐんと、地表に近づく。
 やがて姿見には、小型車から降りてくる一人の女性が映し出された。
 ベージュの短いジャケットに白いシャツ、黒の細身のパンツに同じ黒のパンプス。顎までの長さの黒髪はくせっ毛で、彼女が歩くたびにふわふわと弾む。
 やがて、小柄な彼女は足を止めると、片手を耳に当てた。唇が動いて、何か話しているのがわかる。
 人影は、彼女をじっと見つめた。
 両手を姿見のふちにかけ、いっときも目を離すまいとするかのように、見つめていた。
第一章 異世界での私は、聖女で魔女
「今、事故現場に着きましたー」
 私は携帯電話を耳に当てながら、あたりを見回した。
 県道から少し山を登ったあたりだ。片側一車線、崖側のガードレールの向こうには川が流れている。
 ガードレールは見事に壊れ、ねじれた無惨な姿をさらしていた。
「見通しはよくないですね。当日は大雨でしたし、よけいに……。はーい、気をつけます。お昼には会社に戻りますので。はい、じゃあ」
 通話を切って、リュックタイプのバッグの脇ポケットに入れる。
「よっし。始めるか!」
 大学を卒業し、損害保険会社に就職して一年。保険調査員・松本(まつもと)花笑(かえ)として初めて、一人での交通事故の原因調査ときたら、気合いも入ろうというものだ。
 私はデジカメでカシャカシャと現場写真を撮影し、それからローラー式の道路距離計測器をコロコロと転がして測量する。事故現場図を作成するためだ。
 ──私の両親の事故の時も、調査員さんがこうして調査をしてくれたんだろうな。
 そう思うたびに、仕事には真摯に向き合おう、と、気持ちを新たにする。
 今回の事故は、事故車両の両方にドライブレコーダーがついていたので、契約者の誤解や嘘でややこしいことにはならないだろう。
「えーと、どこから下りられるかな」
 私はつぶやきながら、ガードレールに近づいた。軽く身を乗り出して下を見ると、少し上ったところに川原に下りる階段がある。
 事故の際、車の一台がガードレールを突き破って落ちたので──車はすでに運ばれて、ここにはないけれど──川原も見ておかなくては。
 いったん道路を上ってから、幅の狭い階段をえっちらおっちら下りる。かかとの低いパンプスを履いてきたけれど、スニーカーの方がよかったかもしれない。
 下りきったところから、今度は川沿いに現場に向かった。大雨の後のせいか、川はすっかり濁っていて、魚どころか川底の石も見えない。
 そのとき。
 後ろから、ドドド……と低い音が響いてきた。
「何……?」
 私は上流の方を振り向いた。
 スローモーションのように見えたその光景は、一瞬で私の目に焼きついた。
 目の前に迫る、濁流。そのすぐ後ろから、大量の折れた枝。
 そう……事故当日は大雨で……きっとそのとき、流木でダムができてしまったんだ。それが決壊して、一気に……
 その場から一歩も動けないまま、水と音に飲み込まれ、後は何もわからなくなった。

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