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聖なる魔女と悪魔の騎士4

  • 作家悠月彩香
  • イラスト石田惠美
  • 販売日2020/09/04
  • 販売価格900円

【通常版】900円 /【イラスト特典付き】1000円

『魔女』ユーフェリナは、レグラヴィと共に潜入した貴族の街で、新たな主と契約を結んでいた『魔剣士』にたどりついたが――「さっさとここから消え失せろ」彼にふたたび突き放された時、ウィルガイストの魂の色を視る! そしてついに彼女の身体に宿った『天眼石』の力が覚醒して……!? 明かされる魔女の真実と、ウィルガイストの壮絶な過去。『シヴァドール』とは、いったい何なのか。すべてを視たユーフェリナが選んだ道は――? 不良修道女×エロ悪魔のダークラブファンタジー!最終巻! 話題のWEB小説を電子書籍化!

第6章 契約の対価
 ──あ、まただ。
「フェネ、こっちだよ」
 ハディールのやさしい声に名前を呼ばれると、胸の奥がざわざわと揺れる。
 駄目だと何度も自分に言い聞かせてみるが、ハディールの姿が見えるたびに鼓動が激しくなる。そのうち心臓が止まってしまうのではないかと危ぶむほど、呼吸が苦しくなった。
「──また来たのね。本当にいい加減にしないと、いつか取り返しのつかないことになるわよ」
 呆れる声で突き放しても、彼は一向にへこたれた様子もなく、星明かりがほのかに照らす泉の淵へと彼女を誘った。
 隣に腰を下ろすと、ハディールは待ちかねたようにフェネリーゼの手を取る。
 前回の逢瀬から二ヶ月ほど経過していたせいもあり、彼は久々に見(まみ)える少女を抱き寄せると、待ちきれずに唇をやわらかくついばんだ。
「もっと早く来たかったんだけど、家がごたついててね。やっと機会を見て抜け出してきたんだ」
「……そんな無理をして来なくてもいいのに。ここだって見つかったら危険なのよ」
「だから、危険じゃなくするために、お母上に会わせてもらえるとうれしいんだけど」
 ハディールはフェネリーゼの蜂蜜色の髪を撫でながら、頑として首を縦に振らない少女に、困った笑顔を向けた。
「無理よ、ウィジカはウィジカの中だけで生きていくもの。余所(よそ)者の介入なんて許すはずがないわ。一族の末端ならともかく、あたしは族長の娘なんだから」
「そんなに近くで婚姻を重ねていては、いつか血が腐るよ。近しい者の血は危険だ」
「でも、それが掟なんだもの、仕方ないじゃない。あなた、たぶん族長の前にその姿を晒したら、瞬時に首を刎ねられるわ。そうでなくともロークリンド国王は、魔術や呪(まじな)いの類が嫌いで、ウィジカを排除しようとしているでしょう。こうして森の奥に隠れ潜んでいるけど、いつ見つかるとも限らない。ロークリンドの人間がウィジカの娘をたぶらかそうとしていると知ったら、間違いなく族長の逆鱗に触れることになるわよ」
 彼に触られるたびに高鳴る胸を鎮めようと、ため息とともにフェネリーゼは言った。どうにもならないのだから、立ち去ってくれればいいのに。そう願わずにいられない。
 とはいえ、実際に彼がフェネリーゼの許を去ってしまったら、しばらく虚無から立ち直れそうにないこともわかっている。
 彼が姿を見せなかったこの二ヶ月、寝ても覚めても落ち着かず、食事もまともに喉を通らず、今日は来るだろうか来るだろうかと、森の周辺に魔力の結界を張り巡らせて、彼の気配を探していた。
 その煩悶(はんもん)が永遠となったら、いったい自分はどうなってしまうのだろうか。
 だが、こうして現実に彼と出会い、その身体のぬくもりを感じていると、どうしようもない恐怖に襲われる。こんなことがいつまでも続くはずがないのに。
 今は族長が病がちで、魔力による結界が薄れているが、本来であればとっくに見つかり、ハディールは殺され、自分自身も処罰を食らっているはずだ。

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